僕の玩具



―――・・・鬱陶しい・・・

なんでコイツがココにいるのだ!?と、ルルーシュは心の中で毒づいた。
突然押しかけて来たクロヴィスにうんざりしながらも、それを決して表面には出さずに、ルルーシュは「可愛い弟」を演じている。

「クロヴィスお兄様。・・・いきなりどうしたのですか?」

ルルーシュにビッタリくっついて片時も離れないクロヴィスにナナリーが不思議そうに尋ねた。
それはルルーシュも気になっていた質問だった。

「ナナリー・・・今日から私を本当のお兄様だと思ってくれていいのだよ」
「まぁ・・・クロヴィスお兄様。半分しか血が繋がっていませんけどクロヴィスお兄様は私の本当のお兄様ですわよ?」

「あッ」と、ナナリーの言葉に忘れかけていた事実を思い出し、クロヴィスは顔を真っ赤にして恥じている。
兄の馬鹿っぷりにルルーシュは笑う気も失せていた。

「そ、それじゃぁナナリー。私をお姉様だと思いなさい」
「お姉様・・・ですか?」
「そうだよナナリー。私は将来きみのお兄様のお嫁さんになるのだからね」
「お兄様のお嫁さん・・・ですか?」

聞き返して、ナナリーは「それは困りましたわ」と呟いて、クロヴィスをじっと見つめている。

「何が・・・困るんだい?私がルルーシュのお嫁さんになると不都合なことでも?」

ナナリーは困ったように口ごもりちらりとルルーシュの顔を覗き見る。
その視線に気づき、クロヴィスも釣られたようにルルーシュの顔を覗き込んだ。
ルルーシュは二人の視線を受けつつも、それをまったく無視して読書に勤しんでいる。

「・・・ルルーシュがどうかしたのかい?」
「あの・・・クロヴィスお兄様がルルーシュお兄様のお嫁さんになるというのは、本気で仰っていらっしゃるのでしょうか?」
「当然じゃないか?」
「まぁまぁ・・・それはますます困りましたわ・・・」
「私がルルーシュのお嫁さんになると何がそんなに困るのかね?」

クロヴィスは不安を顕わにしてナナリーに問いかける。

「私先日ユフィーお姉様とどちらがルルーシュお兄様のお嫁さんになるか、お話したばかりですのに・・・」
「・・・な!?なんだって!?」
「ですからクロヴィスお兄様がルルーシュお兄様のお嫁さん候補として名乗りを挙げられるのでしたらライバルがまた増えてしまうことになってしまいますわ・・・」
「ナナリーとユフィーがルルーシュの・・・!?」

突然こんなに身近に強敵が二人も現れたことに、クロヴィスは本気で焦っている。

「ナ、ナナリー!その話は本当のことなのか!?ユフィーが・・・あのユーフェミアがルルーシュのお嫁さんになりたがっているということは!?」
「ええ。それで私達本気で喧嘩をしましたのよ?」

「こうしてはいられない」と、クロヴィスは慌てた様子で部屋を出て行く。

「まぁ・・・クロヴィス殿下。一体慌ててどうしたのですか?」

すれ違いざまに顔を合わせたルルーシュとナナリーの母は、その見幕に驚いた様子で尋ねたが、クロヴィスは挨拶も漫ろに出て行ってしまった。

「・・・折角夕食をご一緒にと思いましたのに、クロヴィス殿下はどうしたのかしら?」
「まぁお母様ったら、クロヴィスお兄様の嫌いなピーマン尽くしをご用意なさったの?」
「ええそうよ。ナナリーよくわかったわね?」

ナナリーの頭を撫でながら、微笑んでいるマリアンヌは黒かった。
ルルーシュのDNAは確実にこの黒い母親譲りだと確信し、ナナリーは幼い顔を引き攣らせた。


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